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マリット#1: ストックホルムでのHumans & Soilの活動

令和2年度のレジデンシー・プログラムはオンラインで行われます。参加するマリット・シリン・カロラス・ドッターとモーガン・クエインタンスには、レジデンシー途中のことををブログ記事の形で発表していきます。以下はマリットからのブログです。


北の日常

スウェーデン北部のウメオに戻ってきた。凍った道と、そこら中に広がる、雪に覆われた白樺。日照時間も減り、一日も短くなり、私の内にある霊的動物である熊は、冬眠して、ふりかえり、内省の時が来たと言う。
伝統文化の中に育たなかった先住民の私だが、季節の節目に立ち向かうのに、私の遺伝的な要素や精神的な何かが支えにはなると感じる。パンデミックの最中はとくに、それによって人生について振り返り、更に深いところにたどり着けるように思える。
最近アパートにアコースティック・ピアノを置いたので、自分の好きなメロディを創っては仕事の合間に一息ついている。

ストックホルムでの制作

3週間ほどストックホルムの国立の劇場団体Riksteaternで、私のプロジェクトHumans & Soilとして制作を行ってきた。私達の作品はライブ配信されたので御覧いただける。

of itself : in itself (Produktionsresidens Dans på Riksteatern)

ダンスと音楽のパフォーマンス

私たちは”of itself : in itself”と題したパフォーマンスの製作過程にある。これは来年3月にウメオのノルディック・オペラでの上演が決定されている。私を含めた7人のアーティストの共同制作だ。

  • 私(振り付けとダンス)
  • リネア・スンドリンとセバスティアン・ビヨルマン(ダンス)
  • アネリー・ネダーベルグ(サウンド・アーティスト)
  • ニーナ・ノルドヴァル・ヴァールベルグ(ヨイク※歌手、ミュージシャン)
  • ユッヴァ・ピッティア(文芸顧問)
  • オルヤン・フィヤルストロム(照明、そして私の人生のパートナー)

私たちはチームだが、一人ひとりが、それぞれにユニークな芸術的な質を持ちながら協働し、伝統的なサーミ唱法であるヨイク、音や光の実験的な遊びをつなげる。踊りながらそれぞれのパーソナリティや芸術的表現が編み、私たちと、私たちの間の文化的なよりどころのようなものをつなげる糸を見つけようとしている。

アイヌ・エクスチェンジ

私たちは今回、アイヌ研究者の鵜沢 加那子氏をゲスト・アーティストとして迎えた。パフォーマンス中に素晴らしいムックリ演奏を披露してくれた。そしてレジデンシーの最中には、彼女自身のルーツであるアイヌの伝統やダンス、音楽についての考えを胸中してくれた。

そんなとき、私は日本が恋しくなる。2016年に群馬県のシロオニスタジオでのアーティスト・イン・レジデンスに参加し、それから京都と東京で合気道と座禅の勉強をしたのが最初だった。自分にとって、はじめから日本はふるさとのように感じられ、武術の練習を通して少しずつ日本語も覚えた。私が来たところとは空気も違い、ネオンの光には冒険家のような気持ちにさせられた。

しかし、サーミの血を引くものとして、アイヌ民族についても知ってはいた。植民地化された土の下に何があるのか、私もその一部である先住民たちの文化について…私は少し調べなければいけないと思った。今回のS-AIRでのレジデンシーを通して、皆さんともしていきたいと思う。


令和2年度 「集合のダイアログ」S-AIR Exchange Programme
[主催] 特定非営利活動法人S-AIR
[助成] 令和2年度 文化庁 アーティスト・イン・レジデンス活動支援事業
公益財団法人 北海道文化財団  公益財団法人 小笠原敏晶記念財団
[企画協力] なえぼのアートスタジオ  
北海道教育大学岩見沢校 アートプロジェクト研究室