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「火の鳥・本能的行為」

先住民の視点から身体的権利に焦点を当てたプロジェクト「Humans & Soil」を主導するマリット・シリン・カロラスドッターは、オンライン滞在制作期間中に二つの作品「火の鳥」と「本能的行為」を制作しました。500m美術館での展示は、その成果を発表するものです。

火の鳥

A dancer wearing a fire bird costume spreading her arm on her knees on a sand dune.
Photograph: Hanna Rydberg

「火の鳥」は、カルロスドッターの先祖から受け継いできた身体についての物語で、かつて身を置いていた様々な大地の風景や記憶を再構築することで自らの身体を発見します。カルロスドッターは、言葉を綴り、身体の動きを操り、周囲の環境を感じ取ることからダンスをすることで、今現在の自分の居場所を再確認し、未来へと繋ぎます。

砂漠の人々を通じて、気温上昇する環境、ポスト・ヒューマニズムの時代に人間がどのように生きるのかに向き合うこと。気候変動で気温が上昇したとき、地球はどうなるのか。未来の身体は、森のない世界にどのように適応し、砂漠の風景の中で生きていくのか。

この展示では、先祖代々受け継がれた身体と未来の身体が表現されており、過去の祖先と接触するための儀式が行われ、私たちの呼吸や身体、自然を思い起こさせてくれます。

(写真 Hanna Rydberg、アシスタント Ebba Kohl)

本能的行為

私たちは、日々の活動や人との出会いを通じて、日常生活の中に安心感を覚えています。買い物に行くとき、都会の公園や郊外の森を歩くとき、私たちはふと立ち止まって考えることがあります。私たちは静けさを感じているのかもしれません。

パンデミック下の生活における現在の課題は、外に出て人と会うことや、自然に触れ合う日常をも変えてしまいます。「本能的行為」と題したこのプロジェクトは、北海道に暮らす人々と交流し、どのように森の中でどのように自然と繋がっているのか、それぞれの物語や関心を共有してもらうことで、参加者それぞれが探るというものです。

参加者に自然に触れ合うことができる場所に行っていただき、その場で自分の呼吸や関心があることを見つけてもらい、観察してもらいました。そこで見つけたのは、パンデミックにより移動が制限されてしまう困難な時代にありながらも、制限を超えて、美しいと思えるものや制約を超えて繋がる、その道のりや物語です。


アーティストについて

マリット・シリン・カロラスドッター  

スウェーデンの先住民族サーミ(ホタゲン)とイラクのクルド民族をルーツとするダンサー、振付師。現在はスウェーデン北部に拠点を置き、カンパニーダンサー、振付家、アーティストプロジェクト Humans & Soil のプロジェクトリーダーとして活動する。

ストックホルム芸術大学で修士号を取得し、日本、ベルギー、ドイツ、アイスランド、デンマーク、ギリシャ、スペインなど、世界を舞台に活動を展開する。

2017年群馬県シロオニスタジオにて「Takemusu – Endless Improvisation」を制作し、東京や京都周辺の様々な寺院で座禅や合気道を学ぶ。2019年北海道で、アイヌの芸術家や学者、活動家と交流し、サーメやアイヌの人々との身体的権利について調査を行う。

2020年には、NPO法人S-AIRの招へいにより、ダンサーのリンネア・サンドリング氏と協働し、サーミの伝統の織物について共有しながら、織物を通じた交流を行うワークショップを開催し、市内在住の参加者と交流するプロジェクトを実施した。

Website: Humans & Soil


展覧会 開催概要
500m美術館vol36 「せんと、らせんと」6人のアーティスト、4人のキュレーター展
会期 2021年12月11日(土)〜2022年2月2日(水)7:30-22:00
会場 札幌大通地下ギャラリー500m美術館
住所 札幌市中央区大通西1丁目〜大通東2丁目
(地下鉄大通駅と地下鉄東西線バスセンター前駅間の地下コンコース内)

令和3年度 S-AIR エクスチェンジプログラム
[主催] 特定非営利活動法人S-AIR
[助成] 令和3年度 文化庁 アーティスト・イン・レジデンス活動支援事業 公益財団法人 小笠原敏晶記念財団
[協力] 札幌市(札幌大通地下ギャラリー 500m美術館